第6話

「だから寿美子が本当のこと言ったらね。」

喫茶店アマンドの中は少し混み始めた。平日の昼間の喫茶店というのは、どうしてこうもサラリーマン一人という姿が多いのだろうか。全員が仕事をさぼっている営業マンに見える。全員でないにしても、その何割かは本当にさぼっているのだろう。

「いないのに、いるって言えないでしょ。」

寿美子はそれでも、浮気していないことを主張した。

「じゃあ、俺から言うけど、去年のクリスマスイブ、男と会ってたでしょ。」

寿美子は一瞬、考えた。

「会ってないよ。」

「みいちゃんの友達のうちに、パーティー呼ばれたとか言ってた日だよ。本当は、一晩中、男とドライブして、どっか泊まったんでしょ。」

「またその話し?違うって、あの時言ったでしょ。」

「どう考えたって、あれはクロだよ。」

「そう思うのは、拓磨の勝手だよ。」

「別れて欲しいんなら、正直に言えばいいじゃん。何を、この期に及んで隠すことあるの?その心理が俺には理解できないよ。最後まで、ええかっこしたいの?どうせ別れる相手なら、何言ったっていいじゃん。」

「・・・」

「俺が最初に疑い出したのは、その時だよ。」

「・・・」

「じゃあ、もっと言おうか。その1週間くらいあと、年が明けた今年の正月、2日に会ったよね。あの時、突然、変な携帯持ってたよね。なんか苦しい言い訳してたけど。あれだっておかしいよ。」

俺は次の疑惑の種を、寿美子にぶつけた。

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第5話

『どうしたの?』

俺は返信した。

『お化粧に時間かかっちゃって。』

寿美子から返事が返ってきた。

『何時頃になる?』

『15分くらい遅れるかな。』

いつものことだが寿美子が約束の時間通りに来ることはあまりない。30分などというのはざらで、1時間待たされる時もある。ほとんどは娘のことを理由にする。「みいちゃん」という言葉を免罪符にしているかのようである。

俺はテーブルの上の冷めたコーヒーを口に含んだ。

結局、寿美子がやって来たのは、更に15分遅れの9時半頃だった。

「ごめん、待った?」

寿美子はコーヒーを持って、ソファーに座っている俺とテーブルを挟み向かいに座った。

「夕べはどこ行ってたの?」

真実の答えが返ってくることがないのを承知で、俺は尋ねた。

「みいちゃんの友達のうちだって。」

予想通りなんの進展もない答えが返ってきた。

「ねえ、本当のこと言いなよ。」

「しつこいよ。」

寿美子は切れ気味に答えた。

「寿美子の言うことって、辻褄だけは合ってるけど、全部後から付け足してるだけなんだよ。」

俺は思っていることをストレートにぶつけた。

「でも本当のことなんだから仕方ないじゃない。」

「それに、寿美子の夕べから今までの行動って、俺への配慮がどこにも入ってないんだよ。昨日からメールに返信してないことや、電話を切ったことは寿美子自身、自覚があるはずでしょ。今まで、気にもしてなかったてことじゃん。普段の寿美子なら、なんかメールしてくるはずじゃない?」

「・・・」

「それに、寿美子は朝ごはんまでご馳走になりたくなかったとか言ってるけど、5時に起きて出てくるなんて不自然だよ。」

「・・・」

「やっぱ、俺が電話する直前まで誰かと一緒にいて、連絡できなかったし、連絡する気もなかったていうのが本当なんじゃないの?」

「そんなことないよ。」

「本当に俺のこと愛してるの?」

「愛してるよ。」

「でも言ってることと、やってることが違うじゃん。」

「・・・」

「ほかに男ができたんなら、はっきり言いなって言ってるんだよ。」

「いないし、拓磨だけを愛してるよ。」

今度は俺が黙ってしまった。寿美子は限りなくクロに近い。正直、最近、寿美子の俺への愛情の薄まりを感じていた。喧嘩をする周期が短くなってきている。喧嘩の度に、俺と別れて結婚できる相手が欲しいという言葉が寿美子の口から出てくる。そんな中のこの事件である。俺が正直に言ったら別れてやると水を向けたのだから、事実ならば、この時とばかりに告白しても良さそうなものである。なのに寿美子は白状しない。一体、何を考えているのだろうか。見当もつかない。もしかしたら本当に、俺の思い過ごしなのかもしれないとすら考えそうになる。

「もういいでしょ。」

寿美子が俺の沈黙に乗じて畳み掛かってきた。

「俺は納得してないけど。」

「拓磨には悪いことしたよ。今までメールしなくて、ごめんね。」

「それで俺が許して終わりなの?」

「それじゃ駄目なの?」

「クルーザーって何よ?」

「だから言ったじゃない。」

「そこからして怪しいんだよ。」

「大勢で行くんだよ。疑うなら新橋までついて来ればいいじゃん。待ち合わせの喫茶店、覗いてみれば?」

「大勢だから浮気相手がいないって証明にはならないけどね。」

「じゃあ好きにしなよ。」

「開き直るんだ?」

「だって拓磨、何言ったって信じてくれないじゃない。」

「寿美子が事実を隠して不自然な嘘で固めるからだよ。」

「嘘じゃないってば。」

寿美子を自白させることは無理だと俺は悟った。それに、浮気と一方的に決めつけて、別れを告げるには、寿美子を失いたくないという気持ちの方がまだ大きかった。

俺は落としどころを探さずを得なかった。

「寿美子は俺のものなの?」

「そうだよ。」

「じゃあ、キスして。」

見えるところに、ほかの客がいないことを確かめて俺は言った。防犯カメラがあるかもしれないが。人の目でないなら、この際気にしない。

「口紅が落ちちゃうよ。」

と言いつつも寿美子は目をつぶって顔を近付けてきた。同時にテーブルの上に乗った豊かな胸がせりだしてくる。白い薄手のふわふわとしたセーターが胸の大きさを強調している。
俺は目を閉じずに、寿美子の唇を受けた。
寿美子の厚みのある舌を自分の口の中に導き入れる。この熱さ、この弾力、このねっとりとしたからみつき具合、この表情、すべてが好きだ。この女とのキスは飽きることがない。これがいつものホテルだったら、5分以上続けていただろう。しかし、ここはいつ誰が来るかも分からない喫茶店の中である。俺はほんの一瞬の安堵感とともに寿美子の唇を離した。

「口紅直してくるよ。」

寿美子はそう言って席を立った。

これが疑惑の始まりだった。

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第4話

泉岳寺のA4出口を出た右に喫茶店ザネッティはある。

俺はエスプレッソをたのみ、左奥にある階段5段ほど高くなった、外や店内から死角になっている席に座った。奥まった場所に、ソファータイプの椅子というのが気に入っているので寿美子と泉岳寺周辺で待ち合わせる時は、いつもここを利用する。ちょっと不思議なのは、店内に入った左にエレベーターがあり、4階にある焼肉の牛角の入口にもなっている。
今、客は少ない。

9時までの1時間足らずの間がなんと長いことだろうか。

俺はコーヒーを飲みながら、今、寿美子と話した内容を改めて反すうした。
寿美子の言うことはすべて辻褄があっている。しかし、すべてが後付けである。寿美子から俺に連絡する機会は、いくらでもあった。なのに寿美子は俺から電話するまでメールすらよこさなかった。仮に寿美子の言う通り、酔っぱらって寝てしまっていたとしても、朝起きた時、メールチェックをするはずである。今まで、何もやり取りする内容がなかった日でも、「おやすみ」「おはよう」のメールだけはお互い、ほとんど欠かしたことがない。寿美子が自分の都合でそれをしなかったのだから、真っ先に気になるはずである。俺がきのう出したメールに返信していないのだから、先ずは、なんらかの返信をしようと思うのが普段の寿美子のはずである。それに俺は今朝、寿美子の娘に心配してるから連絡して欲しいと伝言を頼んでおいて、それを寿美子は間違いなく聞いている。なのに連絡することはなかった。別れるつもりだから、どうでも良いと思っている相手なら仕方ないが、少なくとも、さっきの様子では、まだ俺と別れたくないらしい。ならば何故、これ程までに俺をないがしろにするのか?答えは、つい今しがたまでメールも電話もできない環境にいたと考えるのが妥当ではないだろうか。俺が電話する、わずか数分から十数分前まで、誰かと一緒にいて、俺からの電話がつながらないように電源を切っていた。その誰かに自宅まで車で送ってもらった。携帯の電源は車を降りた直後か、または自宅に戻ってから入れた。俺から電話があったこと、母はコンビニに行っていると適当に言っておいたこと、俺から連絡するように頼まれていたことを娘の美和から告げられた。それを聞いて、どうしようか考えていたか、メールを打っている最中に、俺から電話がかかってきた。そう考えれば、すべての辻褄が合う。今日、クルーザーに乗ると言うのは、日常、考えつくことではない話しなので、おそらく本当のことなのであろう。しかし、誘われた相手は、寿美子の言う、娘の友達の両親ではなく、今朝まで一緒にいた相手ではないだろうか。

俺は寿美子と出会ってからの約5年間、感じたこともなかった不安に襲われた。
今まで、相思相愛を疑ってもみなかった。
口では寿美子に、結婚できそうな相手が見つかったら、その時はいつでも別れてやるなどと言っていたし、実際、そうしてやろうと思っていた気持ちが突然、揺らぎ始めた。
コーヒーはとっくに冷たくなっている。

そんなことを考えている時、寿美子からメールが入った。

『ごめん、少し遅れる。』

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第3話

俺の自宅の最寄り駅である京葉線の海浜幕張から寿美子の住む都営地下鉄浅草線の泉岳寺までは1時間程度である。自宅を出るころはまだ太陽も出ておらず、朝と言うには暗すぎたが、地下鉄を降りて地上に上がった時は、すっかり明るくなっていた。俺は先ずメールをチェックした。ここに来るまで、駅に止まる度にメール問い合わせをしてきたが、やはり最後まで寿美子からメールが来ることはなかった。留守番電話サービスにも問い合わせてみたが録音はなかった。次に寿美子の携帯に電話を掛けた。

呼び出し音が鳴った。

『もしもし。』

寿美子が出た。

『寿美子、どこにいるの?』

俺は尋ねた。

『うちだよ。』

『どこ行ってたの?』

『みいちゃんの友だちのご両親のお宅にクリスマスパーティー誘われたから行くって言ってたじゃん。』

みいちゃんとは、娘の美和のことである。

『泊まったわけ?』

『うん。』

『なんで?』

『酔っぱらっちゃってさあ、気がついたら布団で寝てたよ。』

『みいちゃんも?』

『みいちゃんも泊まったよ。』

『6時くらいに寿美子んち電話したら、みいちゃんしかいなかったよ。』

『私、帰ってきてからセブンイレブン行ってたんだよ。』

俺にそう言ったと娘から情報が伝わっているのだろう。

『なんで帰ってから、わざわざ買い物に出るの?』

『買い忘れてたものがあったから。』

『泊まったのになんでそんなに早く帰って来る訳?』

『あんまり長居して迷惑掛けたくなかったんだよ。朝ご飯まではご馳走になりたくなくて。』

『5時とかに起きて出てくる方が、よっぽど迷惑じゃん。』

『あちらのお母さんは起きてたよ。』

『なんでメールも電話もよこさなかったの?』

『メール入ってるのに気が付かなかったよ。』

『いつまで?』

『さっきまで。』

『なんでさっきから今まで、何も連絡よこさなかったの?』

『今しようと思ってたんだよ。』

『なんで夕べ1回、電話がつながった時、すぐ切ったの?』

『近くにあちらのご両親がいたからだよ。』

『なんで電源切ったの?』

『あそこじゃ拓磨と話せないからだよ。』

『みいちゃんに連絡するように頼んでおいたのに、なんで直ぐにメールくれなかったの?』

『ごめん。』

『なんで嘘つくの?』

『嘘なんてついてないよ。』

『全部嘘じゃん。』

『ほんとだって。』

『パーティーに行ったのはみいちゃんだけじゃないの?みいちゃんは一人で夜中に帰って来たけど、寿美子は別行動だったんじゃないの?寿美子は朝帰りしたんでしょ。ご丁寧にみいちゃんに口裏合わせさせて。』

『そんなことないよ。ずっとみいちゃんと一緒だったよ。』

『ほんとのこと言いなよ。』

『言ってるって。』

『ほんとのこと言ったら別れてあげるよ。』

『ほんとのこと言ってるし、別れたくもないよ。』

『なんで?しょっちゅう別れたいって言ってたじゃん。結婚相手見つけたいんじゃないの?』

『今は拓磨と別れたくないよ。』

『なんで?』

『別れたくないから。』

『じゃあ、なんで浮気するの?』

『してないって。』

『今、泉岳寺にいるんだけど。』

『なんで?』

『浮気の現場を押さえるため。』

『じゃあ、疑いが晴れたからいいじゃん。』

『決定的な証拠がないのと寿美子が自白しないだけで、晴れたわけじゃないよ。』

『まだ疑ってるの?』

『疑ってるよ。なんで二股かけるか解んない。』

『二股なんてかけてないよ。どうしたら信じてくれるの?』

『じゃあ、今すぐ来て。』

『解った。みいちゃんにご飯食べさせたら行くよ。』

『まだ食べさせてないの?今8時だよ。少なくとも6時前には帰ってるのに、今まで何してたの?』

『寝てた。』

『セブンイレブンから帰ってきてから直ぐ寝たの?』

『うん。』

『みいちゃんも?』

『うん。』

『嘘ばっか。』

『嘘じゃないって。』

『じゃあ、早く来てよ。』

『解った。』

『今日は一緒にいられるの?』

『それが午後からクルーザー乗りに行くことになったんだよ。』

『はあ?クルーザー?』

『そう。きのう行ったとこのご夫妻のお友達が持ってて、今日乗りに行くんだけど、ほかに友達連れて来てもいいって言われてるから一緒に行こうって誘われたの。』

『それ、二股の彼氏に誘われたんじゃないの?』

『違うよ。』

『何時から?』

『11時に新橋集合なんだ。』

『朝の?』

『そう。』

『みいちゃんは?』

『勉強があるから行かない。』

『そっちの家族とのパイプ役はみいちゃんじゃないの?本人抜きっておかしくない?』

『そんなことないよ。前から家族ぐるみで親しくしてたんだよ。』

『とにかくザネッティで待ってるから。何時に来れる?』

『9時くらいかなあ。』

『じゃあ、あとでね。』

『うん。』

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第2話

10時、ご馳走もケーキもコーヒーも、すべて片付け終わった頃、俺は再び仕事をすると言って仕事部屋に戻った。携帯を見てもメール着信を示すマークはついていない。無駄とは思いつつメール問い合わせをしてみた。やはり入っていない。俺はもう一度、寿美子の携帯に電話をしてみた。

『お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入ってないため掛かりません。』

新たな疑いが俺を悩ませることになった。電源を切ったのか。もう一度掛けてみた。やはり同じアナウンスが流れる。電波状態が悪いところにいるのか?悲観的観測と希望的観測か入り乱れる。俺はもう一度掛けた。繋がった。呼び出し音が鳴る。1回、2回、切れた。やはり電波状態か?リダイヤルした。再び呼び出し音が鳴る。出た。そう思うのもつかの間、すぐに切れてしまった。間違いなく意図的に寿美子は切った。もう一度ダイヤルした。

『お掛けになった電話は・・・』

それから5分ほど掛け続けてみたが出るのはいつも同じ女性の声だった。
どう解釈したらいいのだろう。悪いことばかりが頭を過る。
11時を過ぎたころ、意を決して俺は寿美子の自宅に電話を掛けてみることにした。もし娘が出て母親はいないということになれば、寿美子はクロということになる。しかし予想に反して電話には誰も出なかった。
こうなると判らないのは、果たして寿美子は本当に娘と一緒なのかどうかである。その後も俺は、寿美子の携帯に電話を何度も掛けたが、二度と呼び出し音が鳴ることはなかった。
その夜、俺は一睡もできなかった。嫌なイメージだけが頭に浮かぶ。男とドライブして楽しそうな笑顔の寿美子。男に抱かれ歓喜の表情を浮かべている寿美子。
翌日は日曜日であった。日曜に俺が仕事をすることは、ほとんどないのだが、俺は妻に仕事に行くと言って朝6時頃、家を出た。日曜に仕事をするのも変だが、こんなに早く出るのも変だ。妻には異様に映ったかもしれない。
自宅のマンションが見えなくなったことを確認して、俺は寿美子の携帯に電話をした。まだ電源は切られているようだ。続けて寿美子の自宅に電話した。朝の6時という時間は、ひとの家に電話するには、いささか早いと思ったが。

5回ほど呼び出し音が鳴った後、電話がつながった。

『はい、佐竹です。』

寿美子の娘の声であった。

『もしもし伊達ですけど。』

寿美子の娘は俺のことを知っている。お互い会ったことはないが、母親に付き合っている男がいて、伊達という名前で、たまに電話を掛けてくるということを知っている。寿美子の話しを繋ぎ合わせると、娘は俺をあまり快く思っていないようだ。だから、たまに電話に出た時の態度も好意的ではない。だが今はそんなことを気にしている余裕はない。

『お母さんいますか?』

『いません。』

いつもの通り、素っ気ない返事だった。この子がまだ小学校にも上がっていないころに両親は離婚し、それ以来、母ひとり子ひとりで、今は高校受験を控えた中3である。

『お母さんにきのうから連絡を取ろうとしてるんですけど、つかまらないんですよ。何かあったのかと思って心配してるんですけど。』

娘が出た時のことを想定して用意していた言葉を俺は出した。

『お母さんなら大丈夫です。』

その時、寿美子とこの娘は昨夜、一緒ではなかったと俺は直感した。

『お母さん、夕べ帰って来ましたか?』

『はい。』

嘘だ。俺は心の中で思った。

『今、どこですか?』

『コンビニに買い物に行ってます。』

寿美子親子が住んでいるアパートから5分くらい離れたところにあるセブンイレブンのことを言っているのだろう。こんなに朝早くから?

『携帯持ってますか?』

俺は尋ねた。

『持ってると思いますけど。』

『おかしいな、繋がんないんだけど。』

『私には解りません。』

これで娘は今、寿美子がどこでどうしているのか知らないが、口裏だけは合わせようとしていることが解った。

『じゃあ、お母さんが帰ってきら電話するように伝えてください。』

俺は娘に頼んだ。
コンビニに行っているのであれば、遅くとも30分程度で帰ってくるはずである。しかし俺は30分以内に寿美子から電話がかかってくるとは思わなかった。
とにかく俺は、寿美子の家に向かった。行ってどうなるものでもないと知っていたし、ましてや家に乗り込むわけにもいかなかった。しかし、近くまで行かずにはいられなかった。

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